海水魚飼育の疑問解決 魚の病気対策


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海水魚を病気にさせないようにするにはどうしたらよいのでしょうか

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 海水魚を病気にさせないために

海水魚を飼育し始めたばかりの初心者はかなりの確率で病気で海水魚を死なせています。
ベテランになるとほとんど病気で死なせなくなります。その違いは何でしょうか?
まず一つに水づくりが挙げられます。

水作りの重要性

毒性比較グラフ

初心者は水が十分できていないうちに海水魚を追加していきます。 水が出来上がらないうちは硝化バクテリアの働きが追い付かないので海水魚はアンモニアの害によって次々死んでいきます。 ベテランは水づくりを理解しているため、水が出来上がらないうちはどんなに気に入った海水魚がいても水槽に入れないようにしています。 水が出来上がる前は絶対に魚の追加はしません。 ベテランの人が海水魚を死なせない第一の理由はこれです。 次にベテランは水質を安定させられることが挙げられます。 水質の状態を知ることができれば早めに対策を打って病気になるのを回避することができます。

水の劣化

水質を安定させる

水質安定の一番良い方法は頻繁な水替えです。 狭い水槽内ではいくら良い水を作ったとしても状態は刻々と悪化していきます。 自然界の海では大量の水があるため何事もないように悪化を防げていますが水槽という狭い場所ではたちまち悪化は進行していきます。 ベテランは早めに悪化傾向を察知し早めに対処できますが初心者は海水魚が死んでいくまで気が付きません。 対処の方法はとにかく水替えです。 水替えを怠ると硝酸塩がたまってしまう以外にpHが低下する問題も生じます。 水槽のpHは初め8.2程度あったとしても時間とともに酸性度が高まっていきます。 海水魚はpHが徐々に酸性側に変化した場合はある程度順応して生きていけるものです。 でもだんだんpHによるストレスは強くなり弱って泳ぎが違ってきます。 上に行ったり下に行ったりするのは苦しがっていると思ってください。 中には苦しがって水槽を飛び出してしまう魚も出てきます。 水質の悪化は新しく魚を加えたとき思い知らされます。 今までいる魚は平気なのに新しい魚だけが死んでいくということが起こります。 元々いた魚はpHの下がった水質に順応していて耐えられたとしても新しい魚は耐えることができないのでpHショックを起こしてしまうからです。

食事時の観察

海水魚を買ってきて1週間以内に死なせてしまう原因の一つに餌付けできないということもあります。 ショップで売られている海水魚はつい最近まで自然の海で生活していたものがほとんどです。 それが知らない水槽に入れられて見たこともない餌を与えられたとしても食欲がわきません。 買ってきた海水魚に餌を与えても先住の海水魚たちとなかなか一緒に食べることができないものです。 先住魚が餌を食べていても仲間に入れてもらえないことがしばしばあります。
アクアリウム初心者は新しい海水魚が実際に餌を食べているかの見極めができないことが多いのです。 ベテランは新しく海水魚を加えるときはサブタンクなどで餌付けを行います。 そして 先住魚と一緒になっても餌を食べていけるかを確認してから水槽に入れるようにしています。 餌を食べなければ海水魚は必ず死にます。餓死で死ぬか体が弱って病気になって死ぬかのどちらかです。 海水魚を病気で死なせる原因に餌のやりすぎのこともあります。 海水魚は餌を与えるとその都度できるだけ食べようとします。 自然界ではいつ食べ物にありつけるか分からないのでいつも食べ置きしておこうとする意識が働いています。 飼育時のコンスタントな餌やりは自然界育ちの海水魚にとっては直ぐにメタボになる給餌方法なのです。 メタボの体になった海水魚は病気になりやすいですし白点虫などにも対抗できません。 1日1〜2回、1〜2分程度で食べきる量に収めるようにします。 (自然界育ちの海水魚は餌が少なめでも十分健康に育ちます)

シアン化合物

購入時のチェック

ショップで売られている海水魚は海で泳いでいるものを網ですくってきたものですが、このようにして採取されたものをハンドコート物と呼んでいます。 そうではなく海にシアン化合物という薬品を散布して海水魚をしびれさせ仮死状態となって浮き上がってきたものを採取する方法があります。 この薬品は海水魚にとってかなりきつくしばらく後遺症が残ってしまうものです。 以前よりは少なくなっていますがショップで売られている海水魚には後遺症で弱った状態で売られているものが含まれています。 ベテランでもこの見極めは難しく初心者はこの海水魚を知らずに買っているので一週間も持たずに死なせています。 シアン化合物による後遺症のない海水魚を選ぶ分かりやすい方法はショップで1週間以上売れ残っているものを選ぶことです。 ベテランの中にはショップで気に入った海水魚を見つけたらすぐ買わず予約をして一週間後に買うという人がたくさんいます。 ページのトップへ戻る

淡水魚との違い

マルチ水温計

その他に海水魚を死なせている原因としては淡水魚と海水魚との違いが解っていないこともあります。 海水魚は淡水魚と違って1日の中で水温がほとんど変わらない環境で育ってきた魚です。 一日の中で2°C以上水温が変化してしまうと病気になりやすくなってしまいます。 淡水魚飼育の時にはこの程度の温度変化は影響ないのですが海水魚はこれが原因で病気が発生するということもよくあります。 マルチ水温計などを使えば一日の最低温度と最高温度が分かるので水温変化が影響したのか判断することができます。水温の変化が起こる水槽では海水魚を健康に育てていけないので水槽の環境を改善しなくてはなりません。

魚の組み合わせ

海水魚の組み合わせ方も病気に大きく関係します。 自分が相手の餌にされてしまうのではないかと心配になる魚と 一緒の水槽に閉じ込められた海水魚はストレスで病気になってしまいます。
自然界の海では怖い魚からは逃げて遠くのほうで自分の居場所を見つけられますが狭い水槽内では不可能です。 ストレスを感じた魚は水槽の隅のほうで震えていたり飾り岩の陰に隠れたままで姿を現さなくなります。 餌をあげる時間になっても姿を現しません。餌を食べなければ体力は落ちそのうち死んでしまいます。 餌を与えるときは毎回個々の魚の食べ方に注意して観察することが大切です。 餌を食べない海水魚がいるときはそのままにしておくと必ず病気になり死んでしまうので別の水槽に移してストレスを無くしてあげます。 家庭の狭い水槽で混泳させることは海水魚にとって大きなストレスとなっています。 自然の海ならお互い気に入らなければ離れていけばいいのですが狭い水槽の中ではそうはいきません。 毎日がストレスなので病気になりやすい状況にあります。水槽は大きな程、魚の数は少ない程ストレスがかからないので病気になりにくいことになります。
また水槽に海水魚を入れていく順によってもストレスのかかり方が違います。 水槽にはおとなしい海水魚から順に入れていくようにするのが原則です。淡水魚と違い海水魚の多くが水槽内の先住権を主張します。 強い海水魚を先に入れてしまうと後から入れられた海水魚は激しく攻撃を受けてストレスで病気になってしまいます。 おとなしい海水魚を先に入れて先住権を持たせ何日か経過してある程度自信がついたところで少し強い海水魚を追加していきます。 このように注意して投入しても必ずしも思うようにはいかないかもしれません。 始めは良さそうだったのにその内攻撃しだすということもあります。 このようなときは攻撃している方をサブタンクに 移してもう一度日にちを開けて入れ直すか隔離ケースに入れて落ち着くのを待つかなど対策しなくてはなりません。 隔離ケースの代わりにセパレーターを使ってもいいでしょう。 テリトリー意識の強い種類を飼うときも注意が必要です。 テリトリー意識が強い海水魚同士は最後の一匹になるまで争いを続け弱いほうが傷を受け傷に細菌が繁殖して病気になって死んでいきます。 コバルトスズメ これも広い海なら別のところでテリトリーを作れるのですが狭い水槽内のためそうはいかないことによります。 男女ペアとなった同士は争うことはないのですが雄と雌を組み合わせれば必ずペアが成立するというわけでもありません。 様子を見ていていじめられている海水魚がいたら強いほうを別の水槽に移すか弱いほうを別の水槽に移すかしないとそのうち病気になり死んでしまいます。
海水魚を混泳させるときは相性を考えて飼う必要があります。 相性が悪い相手がいるといずれどちらかが病気になってしまいます。 一匹がストレスで病気になるとそこで病原菌が繁殖し水槽内が病原菌の多い水質になっていきます。 細菌が多い水槽ではどの海水魚も病気にかかりやすい環境(水質)となってしまいます。 海水魚も人間と同じように病気に強い者もいれば弱い者もいます。 水質の良くない水槽では弱い順に病気になって死んでいきます。 海水魚を病気にさせないためには海水魚にストレスを与えないことです。
以上のほかでもストレスはいろいろなことで生じてしまいます。

ストレスを与えない

水槽のそばで物音を立てることもストレスになりますし水槽を頻繁に覗き込んだり手を入れたり明るさを頻繁に変えたりなどストレスの原因になるものには事欠きません。 海水魚が安心して泳いでいられる環境が作れればなかなか病気にはならないものです。 水槽の中には常在菌としていろいろな細菌や白点病の原因となる白点虫などが棲んでいるものです。 白点病もストレスで弱った海水魚からかかっていきます。 海水魚のストレスを取り除ければどの海水魚も病気にさせないで飼育し続けていけるものです。
病気の種類を研究するよりたくさんのを揃えるよりいろいろな試薬を駆使するよりストレスのない環境を用意してあげることが一番大切なことです。 ストレスを感じると海水魚は体表に白点が現れる種類が多くいます。 人間だと熱が出ると顔が赤くなり悪い食べ物を食べるとジンマシンが出ますが魚はストレスを感じると体表に白点がでます。 白点病のときが多いのですがこれは魚がストレスを抱えた状態のアレルギー反応です。 従ってストレス元を取り除いてあげれば白点は消えていきます。

体色の変化

海水魚を飼育していると病気とは別に体色が色落ちしていくのが気になる場合があります。 淡水魚では殆ど感じない問題ですが海水魚ではよく起きます。 海水魚は成長するに従い体色が変化していったり色や模様が変化していく種類があります。 キンチャクダイの仲間に多いですが幼魚と成魚でまったく違った姿に変わるものがたくさんいます。 また幼魚の時はくっきりした姿をしていても成魚になると色がぼやけていくという種類の海水魚もいます。 この変化を眺めるのも飼育する楽しみの1つです。 これとは別に飼育していくうちにだんだん体色が褪せていったり他の水槽で飼われている魚と比べて綺麗さがない。 という問題が起きることがあります。 これは光の強さと餌の種類と水質の良し悪しが関係しています。 海水魚の多くはサンゴ礁という透明で綺麗な海の中で強い太陽の光を浴びて生活している生き物です。 この環境にいてこそきれいな姿をしていられる生き物です。サンゴ類も同様にこの条件が必要です。 そのためきれいな色を保つためには強い光が必要になります。良い水質が必要になります。 人工餌は栄養が十分なのでこれを与えていれば普通はほとんど問題はありません。 でも餌によって多少違いがあって餌により体色が変わるということも起きます。 色あせしてきたときはまず光を疑ってみてください。 メタハラを使うかそれに近い照度になっているか、苔の発生を恐れて点灯時間が短すぎていないか、など考えられます。 餌を変えることによって気に入った体色に変えられるかもしれません。 水質が悪いと健康に育っていきません。 スーパークリーナー おそうじパーフェクト5 すなわち海水魚が病的で顔色が悪い状態になっているわけです。
ストレスを除く水槽環境を構築することが病気治療より大切ですがどうしても病気になってしまうという人のために治療方法の説明をしてみます。

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 白点病とは

白点病の魚

淡水の熱帯魚でも海水魚でも白点病で魚を死なせている人が多いと思います。 と言うより魚が白っぽくなって死んでいたというのを目にすることが多いのだと思います。
海水魚が病気で死ぬのは実は水の中に常に住んでいる常在菌が原因していることが多いのです。 空気中にいろいろな細菌がいたとしても私達人間がめったに風邪にかからないのと同じで水の中に常在菌が棲んでいても普通は病気になりません。 白点虫に寄生されて体力が落ちたときにかじった傷口に細菌が繁殖し病気になって死んでいきます。 海水魚が体力を落とすのは白点虫に限らずほかの海水魚にいじめられて傷つけられたりした時もあります。 そこに細菌が繁殖して病気になって死んでしまうこともよくあります。 海水魚のヒレ、エラ、体表などに現れる白点は海水魚自身が持つ免疫能力で起こる抗体反応です。 水質が悪化してしまったときや水温が急激に低下したようなストレスが発生した時に白点は出てきます。
白点病の多くが白点虫という原虫(原生動物)が魚の体に寄生したとき起きるためそう呼ばれています。 この原虫はクリプトカリオン・イリタンスという虫で海水の中で生活しています。 淡水の熱帯魚飼育でもよく白点病になりますがこちらのほうはイクチオフィリス・ムルチフィリスという淡水に生息する原虫で別もので生態も違います。 また、魚に寄生して体表に白点が現れる原虫は白点虫だけではなくアミルデミニウム・オケラテウムという原虫ほかいろいろいて似たような症状になります。 体表に現れる白い点々は寄生虫に対抗するため免疫機能が働いた結果生じる抗体反応です。 今、体は外敵と戦っている最中だよというサインです。
白い点々は寄生虫による食害のほか水温が低下したとき、pHが下がってしまったとき(7.7以下)、比重が高くなってしまったとき(1.025以上)など高ストレスになったときにも現れます。 注意深い人は尾びれや背びれの透明部分の濁りで初期段階の白点病を発見することができ早期発見早期治療で完治させることができます。 白点病は白点虫が原因のことが割りと多いので白点虫の退治の仕方について見ていきます。 白点虫にかぎらず原虫というものは陸上にいる昆虫が成長するに従い卵、幼虫、サナギ、成虫と変わっていくのと同じように変態していきます。 このことを理解していないと原虫類の退治はできません。 原虫類はどれも同じような変態をするので白点虫の例でその説明をします。 最初は幼虫の状態でトーマイトと呼びます。
これが成長していくにしたがい トーマイト → セロント → ホロント →  トロホント → プロトモント → トモントと変わり、トモントはまたトーマイト(幼虫)を産んで増えていきます。 その変化の過程を追っていくと次のようになります。

 1.トーマイト(幼虫)期

白点病の元となる白点虫はどこにでもいるものです。 卵は底砂ライブロックの表面などにくっついてシスト(堅い殻につつまれた 0.2〜0.3o の丸い卵)の状態になっています。 シストの中では卵が作られていき時間が経つと幼虫として生まれていきます。 一つのシスト(耐性卵)の中で生まれる幼虫の数は100〜200匹にもなります。 この幼虫のことをトーマイトといいます。 シストは堅い殻なのでトーマイト(幼虫)はその中で守られていて硫酸銅ヒコサンZなどの薬品類で薬浴しても死ぬことはありません。 すなわち、この期間は薬が効かないということです。 ただし、淡水浴低比重法のように比重を落とす方法をとった場合はシストの細胞内に水が浸入するので細胞が膨れてパンクし白点虫は死んでしまいます。
トーマイト(幼虫)が作られる日数は一定ではなく環境により 3日でできたり 一か月近くかかったりしています。 トーマイトは周りの温度や酸素のあるなしで早く生まれたりゆっくり生まれたりしています。 トーマイトの放出水中は水の循環があるので酸素が豊富にあります。 底砂の表面は水に接しているので酸素の十分ある状態にありますが砂の奥は酸素が少なくなっています。 このような砂の奥のシストはトーマイトの成長が遅く育つのに時間がかかります。 さらに酸素がないような場所では成長が進まずシストは休眠状態になります。 再び酸素が得られるまで休眠を続けていきます。 その後、メンテナンスなどで底砂をかき混ぜたりすると酸素にふれ活動を開始してトーマイト(幼虫)が成長します。
トーマイトの大きさはとても小さいです。0.2〜0.3o の大きさしかないシストの中に作られる 100〜200匹のトーマイト(幼虫)なのでとても人間の目で見ることはできません。 トーマイト(幼虫)は充分な大きさに育つとシストから放出され寄生するための魚を求めて海中を漂っていきます。

 2.セロント期

シストから出たトーマイトはセロント(仔虫)という状態になって寄生する海水魚を求めて海水中を漂います。 漂っているうちうまく海水魚にぶつかることができれば海水魚に寄生することになります。 セロント でも元気のある海水魚は寄生するものに対して防御作用が働くためセロント(仔虫)を寄せ付けません。 セロント(仔虫)が寄生できるのは免疫力の弱った海水魚に出会うことができたときだけです。 その上セロント(仔虫)の寿命は 2日間と短い上に海水魚に寄生する能力となるとさらに短く数時間から長くても 18時間くらいです。 セロント(仔虫)は200匹くらい生まれたとしても体力の弱った海水魚に出会えなければ次々と死んでいきます。 セロントが生まれて1日も過ぎれば心配のない状態になってしまいます。 たくさんのセロントが水中を漂っていても大きさが0.03〜0.05o なので人間には水槽内に何もいないように見えています。
また、セロント(仔虫)が生み出される時間帯は夜中のことが多いのです。 動きの鈍いセロント(仔虫)が海水魚に寄生するためには海水魚が眠っていて泳ぎ回っていない夜が都合がよいのです。

 3.ホロント期

運よく弱い海水魚にたどり着くことの出来たセロント(仔虫)は海水魚の粘膜を通り抜け表皮の内部へ侵入していきます。 この状態になったセロント(仔虫)はホロントと呼ばれるようになります。 セロント(仔虫)は海水中を漂っているだけのものでしたがホロントの状態になると海水魚の体表を食べていき表皮の最深部まで進んで定着します。 この時海水魚は痒がってライブロックなどに体をこすりつけたりしているはずです。 海水魚の様子を注意深く観察している人はこの状態で気付くこともありますがあまりにもホロントが小さいため人間の目には見えず普通は白点病にかかっていることには気づきません。 ホロントはウロコの内側まで進んでいってその場所で栄養分を食べて成長していきます。 ホロントはウロコの内側で成長していきます。 海水魚の体は白点虫に対抗するため抗体反応を起こし体表に白い点々が現れます。 海水魚が白い粉をまぶしたような状態になるので餌やりのときなどに白点病にかかっていると気づきます。
ホロントは 海水魚の表皮の内側で3〜7日間かけて栄養をとり0.2〜0.3o の大きさにまで成長します。

 4.トロホント(成虫)期

ホロントが充分成長するとトロホント(成虫)になります。 トロホント(成虫)になるとやがて表皮の最深部から表面へと移動します。
プロトモント表面に出たトロホント(成虫)は海水魚から離れて海水中に出ていきます。トロホント(成虫)は次々表面に出ていき海水魚を離れていきます。 その間数時間かかりますがその多くが夕刻から深夜にかけての時間帯になります。 トロホント(成虫)は全部海水魚から離れていくので海水魚としては白点病が治ったように感じるかもしれません。 でもこのあと白点虫は水槽の中で数を増やしてまた弱った海水魚に寄生してくるので2度目に寄生された海水魚はさらに弱ってしまいます。 そしてまた離れてまた寄生すると繰り返すので水槽の中では弱った海水魚は死ぬまで寄生され続けてしまいます。

 5.プロトモント(成虫)期

トロホント(成虫)は海水魚を離れるとプロトモント(成虫)という状態になって海水中を動き回りながら沈んでいきます。
プロトモント(成虫)は下にたどり着くと定着するのに適当なところを探して動き回ります。 やがて底砂ライブロックなどの適当なところを見つけると数時間後に活動を停止します。
この数時間の間は硫酸銅などの薬浴をしていればプロトモント(成虫)を殺すことができます。 トモントまた、淡水浴などの低比重法をやっても殺すことができます。

 6.トモント期

底砂やライブロックなどに定着して活動を停止したプロトモント(成虫)はそのうち堅い殻(シスト)をつくりだします。 この状態になった白点虫をトモントと呼びます。
シスト(耐性卵)となった白点虫は内部でトーマイト(幼虫)をつくりだしトーマイト期から始まる白点虫のサイクルを繰り返していきます。

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 白点病の対処方法

薬品による治療

白点虫はこのように変態をして生きていて退治薬で殺せる時期と殺せない時期があります。 薬で退治できるのは卵から孵って水中を漂っているときと(小さいので人間の目には見えません)、海水魚の体を離れて水中をさまよってシストになるまでの数時間だけです。
白点虫は普通10日前後で1サイクルを繰り返していますが薬が効くのは卵から孵った約1日と白点虫が海水魚を離れてからの18時間程度の間だけです。 ただ白点虫は全部が同時に成長をしていくのではなく 成長の早いものから順に3〜4日かけて次々と海水魚から離れていきます。
硫酸銅 薬浴剤を使って退治しようとするときはその間ずっと薬が効いている状態にしておかなくてはなりません。 薬浴剤としては硫酸がプロの間ではよく使われます。 硫酸銅は水に溶くとイオン化して銅イオンと硫酸イオンに分かれます。 このうち銅イオンが動物のSH酵素の働きをを阻害してエネルギー代謝ができなくなくなるため死んでしまいます。 硫酸銅とは銅のサビである緑青(ロクショウ)の仲間なので人間にも海水魚にも白点虫にも毒です。 これを薄めていくと薄くなるに従い人間には毒ではなく海水魚には毒という濃さや海水魚には安全で白点虫には毒という濃さになります。 濃さで言うと銅イオン濃度1ppmを超える濃さは海水魚にも白点虫(セロントとプロトモント)にも危険な濃さです。 白点虫だけを殺そうとすると1ppm以下の濃さにしなくてはなりません。 また、銅イオン濃度0.4ppm以下になると白点虫にさえもダメージを与えられなくなってしまいます。 すなわち白点虫を退治するには銅イオン濃度は 0.5〜1ppmの状態にしておく必要があります。 硫酸銅は最初に作った濃度が適正でも時間とともに分解されて濃度が下がっていきます。 そのうち 0.5ppmより濃度は低くなってしまいます。 水槽内の状態により下がり方は一定ではないのですが普通は最初に上限近くの濃度に設定して下がった分を朝晩に追加して上限近くへ戻していくということを行っています。 24時間、あいだを空けると0.5ppmを下回ってしまうことがあるので一日2回の補給をしていていきます。 銅イオン濃度が 0.4ppm以下の状態をつくってしまうとたまたまこのタイミングでセロントになった白点虫は生き延びてしまいます。 そして海水魚の体内に入ってホロントになってしまいます。 そのあとに銅イオン濃度を上げても海水魚の体内にいるホロントは殺せないのでその海水魚は白点病になってしまいます。 難しいのは全ての海水魚が1ppmまで大丈夫というわけではなく 種類や大きさなどにより違っていたり病気の進行状態によってはこの値まで耐えられないということがあります。 薬浴治療したはずなのに死期を早めてしまったということもあります。 また銅イオンテスターも会社によって測定値の違いがあるものです。
白点虫 白点虫はシスト(耐性卵)から仔虫(セロント)が生まれてその後成長しまたシストになるまでの日数は環境により異なり早ければ6日ほどで 1回転します。 一方長いときは 1ヵ月以上かかったりして一定ではありません。 また、同じシストから生まれた仔虫でも成長がバラバラなため成長して海水魚を離れるプロトモントは数日間かけて次々と出ていきます。 そのため、銅イオン濃度はこの間連続して0.5〜1ppmを保っていく必要があるのです。 通常は朝晩 2回の補充を1週間続けていってその後海水魚の体表に白い点々が見られなければ白点病が治ったと考えています。 海水魚はこの値の銅イオン濃度に耐えられますが水槽内にいる他の小生物や無脊椎動物は耐えられません。 薬浴をメイン水槽で行ったとしたら海水魚が生き延びた後はサンゴイソギンチャクエビヨコエビホヤゴカイヒラムシコペポーダなどの死骸でいっぱいになります。 また、硝化バクテリアもダメージを受けるので回復するまでに数週間かかります。 薬浴は海水魚以外の生物のことも考えなくてはならないので海水魚を別の水槽に移して行うのが良いでしょう。 白点虫は海水魚以外の生物には寄生しないのでメイン水槽を海水魚のいない状態にすれば白点虫はシストからセロントが生まれても次々死んでいきます。 1週間後海水魚を戻せば白点虫は退治できたことになります。
薬浴する方法としては硫酸銅による方法が一番効果がありますが硫酸銅は劇薬なので薬局にハンコを持っていかなくては売ってもらえません。 容量も大きなものしかないのでアマチュアの人では手に入れにくいと思います。 アマチュアの人がショップで手に入れることのできる銅イオンはシーケムキュプラミン 、 日動カッパーセル などになります。硫酸銅(銅イオン)以外の薬品では色素剤と呼ばれる種類の薬が白点病に効くと言われています。 色素剤はマラカイトグリーン(アマチュア用に売られているものはヒコサンZアグテンスーパースカットなど)やメチレンブルーなどがあります。 これらの薬は水に濃い色が付きますが濃い色が付いているうちは薬の効果がある状態です。 光にあたるとこの薬は分解して色が消えていくので夕方から薬を使ったり暗くして使うようにします。 マラカイトグリーンは硫酸銅よりかなり弱い薬品ですが丁寧にやればマラカイトグリーンでも白点虫を殺すことができます。 ただ、効き目が強い硫酸銅であっても濃度の低い期間を少しでもつくってしまうと失敗するのでより濃度管理をシビアにしなくてはなりません。 また、マラカイトグリーンは多少魚毒性があって水温が高くなるほど魚毒性が高まるので使う場合水温に注意をする必要もあります。 マラカイトグリーンと違いメチレンブルーの方は植物に対して害が出るので水槽によっては使わない方が良い場合があります。 メチレンブルーを基本としたグリーンFグリーンFゴールドリキッドニューグリーンFサンエーストロピカルゴールドなども同様です。
白点虫についての説明をしましたがウーディニウム病(白点虫よりサイクルが短く繁殖力が強いため早く病気が進み治すのが難しいです)、トリコディナ病など原虫が原因の病気は同じ退治方法になります。 薬浴剤は本来は細菌を殺すことを目的とした薬で白点虫など原虫を殺す薬ではありませんが濃度が濃ければ体の大きい原虫類も殺せるといったものです。
細菌は細胞の構造の違いによりグラム陽性菌グラム陰性菌に分類されて考えられています。 薬浴剤はグラム陽性菌に効くもの、グラム陰性菌に効くもの、両方に効くものがあり病気の原因になっている細菌の種類によって薬を選びます。 また効果のある薬でも使っているうち細菌に耐性ができて効かなくなってしまう種類の薬もあります。 この場合は違う薬に変えて細菌を退治しなくてはならないことになります。 カニ・シャコホイホイ

有害生物除去剤は

淡水浴による治療

薬を使って病気を治す方法以外に海水魚を淡水に入れて治す淡水浴という方法があります。
淡水浴は海水魚を比重 0 の淡水に 1分〜数分入れて浸透圧を利用して白点虫を殺す方法です。 淡水に入れると浸透圧によって水が細胞膜を通り抜けて細胞の中に入っていくため細胞が膨れていきそのうち破裂して死んでしまうという原理です。
実際には次のような手順で行うのがよいでしょう。
プラケースか洗面器、バケツなど小さな容器を用意します。 カルキ抜きした水道水を水槽の温度と同じにして容器に入れます。 病気の海水魚をその中に移し1分程度待ちます。 海水魚の大きさ、体力の弱り方により入れる時間は前後します。 淡水に入れると海水魚は横になって動かなくなりますが治療のためなのでそのまま入れておきます。 1分経過後、容器の中に入っている水道水と同じ量だけ海水を入れます。 ということは容器内は50%に薄まった海水になったことなります。 こうすることで弱った海水魚をいきなり通常の比重に戻してショックを与えてしまわないように戻せます。 その中で30分くらい泳がせときますから出来ればヒーター、エアレーションもしてあげます。 そのあとサブタンクや隔離ボックスなどで薄めたグリーンFゴールド顆粒などを入れて原虫に傷つけられた箇所の保護をしてあげます。 淡水浴この作業を1日1回してあげるとだんだん白点が見えなくなっていきます。 長い時間をかけて淡水に入れておけば白点虫は死んでいきますが海水魚自身の体も浸透圧の影響を受けてしまいます。 そのため細胞が少しずつダメージを受けていくので体力がなくなり弱っていきます。 淡水浴は体力のない海水魚製造器である一面も持っているので注意が必要です。
その点、比重法は淡水浴ほど海水魚にダメージを与えません。

低比重法による治療

低比重法は海水を淡水で薄め50%位の比重にしたところで海水魚を 1週間〜1カ月程度入れます。 時間をかけ浸透圧の力で白点虫を退治する方法です。 この方法で白点虫を退治することはできますが低比重に耐えられる魚 耐えられない魚があったり弱っている魚が耐えられなかったということもおこります。

クリーナーによる治療

白点虫の退治方法にはそのほかクリーナーフィッシュと呼ばれる海水魚を一緒に飼って白点虫を食べてもらう方法もあります。 クリーナーフィッシュ クリーナーフィッシュの代表と言われる海水魚にホンソメワケベラがいます。 この魚はほかの海水魚の体表についている寄生虫を好んで食べてくれる海水魚です。 大きな海水魚は喜んでクリーナーフィッシュに体をつつかせて寄生虫を食べてもらっています。 白点虫が海水魚の体表に現れたときはクリーナーフィッシュが食べてくれますが白点虫は多くの時間海水魚の体内にいるかシストの状態になっているかなので万全とは言い難いものがあります。 その上ホンソメワケベラを水槽内で長く生かせておくことは難しいものです。

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 白点病以外の病気

海水魚の病気の代表的なものに白点病がありますが病気の種類としてはそれ以外にも数種類のものがあります。
ウーディニウム病という白点病に似た病気は白点病より小さな白点が数多くできスズメダイなどがかかりやすい病気です。 呼吸が速くなり目に白い膜が張り動きが鈍くなります。 この病気にかかると3日くらいで病気が進行してしまいます。 治療方法は白点病と同じですが進行が早いためほとんど治すことができません。 白点病で死んだと思われているもののかなりのものがこの病気だといわれています。
トリコディナ病というクマノミ類がかかりやすい病気があります。 この病気にかかると体表が薄い半透明の膜を張ったようになりほとんど死んでしまいます。 ショップでクマノミを買ったときすでにこの病気にかかったものを買うことが多くこのような時は翌日くらいで死んでしまいます。 海水魚は飛行機海外から輸入されるとき輸送費がかからないよう狭い容器に入れられて運ばれます。 狭い容器内の海水魚は体がこすれて傷つき原虫が侵入しやすくなってしまいます。 狭い容器の中で糞などするとたちまち水質悪化で海水魚は全部死んでしまいます。 これを防ぐため輸送前は1週間近く海水魚に餌を与えていません。 そのため海水魚は体力を落とした状態で運ばれてきます。 ショップが仕入れた海水魚はどれも弱った状態で入ってきます。 入荷した直後の海水魚は非常に弱っていることが分かっているので良心的なショップは直ぐ店には出さず元気を取り戻した状態にして売場に出しています。
ポップアイという目が大きく膨れ上がる病気があります。 この病気はエロモナス菌という細菌が目の周辺で繁殖しておこる病気です。 水槽の中にはいろいろな細菌が住んでいます。 海水魚が元気なうちは何の影響もありませんが傷を負ったり体力が落ちたときは弱った個所で繁殖して病気になります。 ポップアイは水替えの間隔があいて水質が悪化した時に出やすく メンテナンス不足のとき発症することが多いです。 見た目重症そうですが水質を良くしてあげると自然と治ってしまうことも多いものです。 エロモナス菌はエラの付け根部分で繁殖するとえらが立ち上がったようになり松かさ病と言われる症状になります。 傷口で繁殖して赤班病と呼ばれる症状になることもあります。
チョウチョウウオがかかりやすい病気で体の片方に刀傷のような傷ができて日増しに大きくなっていくビブリオという病気があります。 この病気はビブリオ菌という細菌が繁殖して起きたものですがほかの海水魚にも感染しやすくほとんど治すことができない病気です。 このような病気は治すことよりほかの海水魚にうつさないようにすることが大切です。
リムフォシスティス病 リムフォシスティス病という大型のヤッコ類がかかりやすい病気があります。 この病気はリムフォシスティス・ウィルスが繁殖してかかる病気で白いカビのようなものがヒレ先やえらのトゲや体表についたものです。 白い点がだんだん大きくなってデキモノとなるもので形からカリフラワー病とも呼んでいます。 淡水浴が効く場合が多く水質を良くすれば自然治癒してくれることもあります。
また大型ヤッコがかかりやすい病気にネデニア病という病気もあります。 この病気はハダムシという透明な寄生虫が体表について起こる病気でハダムシが付くと海水魚はかゆがります。 透明な虫なので海水魚がかゆがるまで気付きませんが目に寄生した時は目が濁ったようになるので異常に気付くようになります。 クリーナーフィッシュなどを一緒に飼っていれば食べてくれますが ハダムシの退治には淡水浴が効果的です。
チョウチョウウオやヤッコ類が罹るエラ病という病気もあります。 この病気にかかると体色が黒ずんでいき呼吸が速くなります。 名前の通りエラに寄生する虫による病気ですがこの病気の治療は淡水浴ではなく濃塩水浴になります。 海水に食塩(塩化ナトリウム)を加えて比重が 2倍の海水を作り15秒〜1分間入れておくとエラの中から透明の虫がばらばらと出てきます。
そのほかの病気もありますが病気の種類を当ててもあまり治療に結びつかないことが多いです。
海水魚の治療は細菌を殺す薬を水中に溶かしてその中で海水魚を泳がせるか淡水浴をするかがほとんどです。 薬浴をするとき使うは白点病だけに効くというようなものではなくいろいろな細菌に効くというものがほとんどです。 水槽内で病気が発生したときはどの細菌や原虫が原因かはあまり問題ではありません。 今回はたまたまその細菌がその海水魚に繁殖したと考えたほうが良いと思います。 水槽の水質がたまたまその細菌が繁殖しやすい状態になったとか 弱った海水魚にたまたまその細菌が繁殖してしまったということです。 病気を治すというより病気にさせない環境を作るほうが大切です。良い水質を維持することです。

病気にさせない大切なことは

良い水質とは常在菌の数が少なく悪玉菌にとって活躍しにくい状態になっていることです。 水中にはいつも善玉菌と呼ばれる生物にとって良い働きをする細菌と悪玉菌という悪い働きをする細菌とどちらとも言えず水質状態によって良い方になったり悪い方になったりする日和見菌と言われる菌類が漂っています。 水中ではこれらの細菌が絶えず勢力争いをしていて水質が良い時は善玉菌の勢力が勝っています。 水質が悪化すると悪玉菌の勢力が高まり病原菌であるビブリオ菌などが勢力を伸ばします。 病気になりやすい水質状態になるとどの海水魚もちょっとしたことで病気になってしまいます。 一匹が病気になるとほかの海水魚も病気になっていくのはそのためです。 そのため水質を良い状態に保つことがとても重要なのです。 それと同時に重要なことは海水魚に元気をつけることです。 元気をつけるためには栄養のある餌を与えることも必要です。 アスタキサンチンDHAEPAラクトフェリンなどを多く含んだフィッシュフードを選ぶとよいでしょう。 海水魚はストレスを感じると体力を落とします。 餌を食べないと体力を落とします。負傷すると体力を落とします。 病気は体力の落ちた弱っているもの順にかかっていきます。 全部の海水魚が体力のある状態だとたとえ水質が少々悪化したとしても一匹も病気にならずに耐えられます。 ストレス 体力のない海水魚がいるとちょっとした水質の悪化で病気の海水魚がでてしまい病気の海水魚がいることで水質はさらに悪化の方向へ向かっていきます。 病気の治し方のスペシャリストになるより病気にならない環境づくりのほうが大切だといえます。

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